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大阪地方裁判所 昭和35年(ワ)4017号 判決 1961年1月13日

原告 嶋本利彦

被告 松本吉雄

主文

被告は、原告が訴外山崎昌太郎との間において、(イ)別紙第一目録記載の物件につき大阪法務局中野出張所昭和三四年八月二五日受付第二四〇九六号、(ロ)別紙第二目録記載の物件につき同出張所同月二一日受付第二四〇九六号の各所有権移転請求権保全仮登記に基き、昭和三五年六月一六日付代物弁済を原因とする所有権移転本登記手続をなすことを承諾せよ。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は主文同旨の判決を求め、その請求原因として

(一)  別紙第一、二目録記載の各物件(以下前者を第一物件、後者を第二物件と略称する。)は、もと訴外山崎昌太郎の所有であつたが、右山崎は訴外大福産業株式会社(以下訴外会社と略称する)との間において、昭和三四年八月二五日第一物件につき、同月二一日第二物件につき、それぞれ代物弁済の予約をなし、権利者を訴外会社、登記原因を代物弁済予約とする請求の趣旨(イ)(ロ)記載の如き所有権移転請求権保全仮登記を了した。

(二)  原告は昭和三五年五月六日、訴外会社から右第一、第二物件につき同会社の有する右予約完結権の譲渡を受けて同月一一日その旨の附記登記を了していたが、同年六月一六日、原告山崎間の裁判上の和解において右予約完結権の行使に基き代物弁済契約が成立した。

(三)  被告は本件第一、二の各物件について、不動産強制競売の申立をなし、昭和三五年五月二七日同月二五日付競売手続開始決定を原因とする登記(大阪法務局中野出張所受付第一四八三七号)をなした。

(四)  そこで、原告は前記仮登記に基き所有権移転本登記手続を申請するについて、不動産登記法第一〇五条第一項により、利害関係人たる被告の承諾書、又はこれに対抗し得べき裁判の謄本を必要とするところ、任意に承諾しないので、被告の同意を求めるため本訴に及んだものである、と述べ

立証として、甲第一号証の一乃至四、第二乃至第四号証を提出した。

被告訴訟代理人は「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、答弁として

請求原因第一、三項の事実は認めるが、同第二項の事実は不知と述べ、

甲号各証の成立を認めると述べた。

理由

原告主張事実中、請求原因第一、三項の事実は当事者間に争がなく、成立に争のない甲第一号証の一乃至四、第二号証によれば、昭和三五年五月六日、原告は訴外会社から、本件第一、二物件につき訴外会社が山崎昌太郎に対して有する代物弁済予約完結権の譲渡を受けた上、同月一一日請求の趣旨(イ)(ロ)記載の各仮登記にその旨の附記登記をなしたこと、及び同年六月一六日、原告山崎間の裁判上の和解において、右予約完結権の行使に基き本件物件につき代物弁済契約が成立したことを認めることができ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

そうすれば、原告が右仮登記に基き所有権移転の本登記をなしたときは、右所有権の取得は仮登記の順位によつて保全される結果、被告が昭和三五年三月二七日にした強制競売申立の登記はこれに後れることになることは明らかであるから、その意味において、被告は不動産登記法第一〇五条第一項、第一四六条第一項に所謂本登記につき登記上利害の関係を有する第三者に該当するものといわなければならない。

そして、不動産登記法第一〇五条第一項、第一四六条第一項によれば、右利害関係を有する第三者たる被告は、仮登記権利者たる原告が本登記をなすべき実体上の要件を具備した場合においては本登記手続を申請するにつき承諾(実質的には自己の関係登記より先順位に占位すべきことにつき承認)の意思表示をなすべき義務を負うものと解せられるから、右義務の履行を求める原告の本訴請求は正当である。

よつて、原告の本訴請求を認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 宮川種一郎 奥村正策 島田礼介)

第一目録

大阪市阿倍野区相生通一丁目六〇番地ノ一

一、宅地 一四三坪一合四勺

右地上 家屋番号同町第一五〇番

一、木造瓦葺平家建居宅一棟、建坪三六坪四合一勺

右地上 家屋番号同町第六〇番の四

一、木造亜鉛鋼板葺平家建店舗一棟、建坪六坪五合

第二目録

大阪市阿倍野区相生通一丁目六二番地の一

一、道路 八歩

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